この20年間、パーキンソン病をはじめとする複雑な遺伝病の研究分野では革命が起きています。これまでに、病因またはリスク変異種の両方を特定することができるようになり、その結果、病気の原因となる分子経路についての理解が深まりました。
パーキンソン病の分野でこれまで行われてきた遺伝学的研究の約90%は、ゲノムワイドなスケールで、ヨーロッパ系の集団を対象に行われてきました。Global Parkinson’s Genetics Program (GP2)は、パーキンソン病の研究において、これまで参加者が少なかったコミュニティの代表者を増やすことで、この格差を解消することを目指しています。
この取り組みの一環として、GP2は今年、Black and African American Connections to Parkinson’s Disease study (BLAAC PD)を開始しました。その主な目的は、これらの集団におけるパーキンソン病の遺伝子構造を解明し、欧州系集団で研究されている介入策やパーキンソン病治療のターゲット候補、あるいは予防戦略がこれらの集団にも関連するかどうかを理解することです。このため、BLAAC PD研究では、米国内で黒人およびアフリカ系アメリカ人のパーキンソン病患者と対照群のボランティアを募集します。この先駆的な研究は、遺伝だけでなく、これらの集団におけるパーキンソン病の多様な側面を評価するための基礎的なコホートとしても役立ちます。
これまで、黒人やアフリカ系アメリカ人のパーキンソン病感受性に対する遺伝的影響はほとんど知られていません。実際、文献に掲載されている関連研究は非常に少なく、そういった研究対象はたった50人未満に過ぎません。したがって、この分野に存在する知識のギャップを埋め、黒人やアフリカ系アメリカ人の参加者を含む研究を進めることが不可欠です。
黒人やアフリカ系アメリカ人を対象とした遺伝学研究を推進することは、多くの利点があると考えられます。これにより、より広範な遺伝子変異を特定できるようになり、より包括的な遺伝子検査の開発に役立つ可能性があります。また、この研究は、病気のメカニズムを解明し、すべてのコミュニティにとってより効果的な医薬品の開発に役立つ可能性があります。さらに、黒人やアフリカ系アメリカ人の集団を対象としたファインマッピング解析は、対立遺伝子の多様性や連鎖不平衡パターンを考慮すると、広範な疾患状況に適用可能な知見を提供する推定機能的変異種を同定するために極めて有用です。
この先駆的な研究プロジェクトは、パーキンソン病の病因の根底にある分子の複雑さを明らかにするための継続的な努力の中で、貴重なデータを生み出すことになるでしょう。