2026年5月4日から7日まで、アジア地域の臨床医と研究者がタイのバンコクに集まり、地域会合とバイオインフォマティクスの合同ワークショップに参加しました。このイベントには、グローバルな調査でこれまであまり研究されて来なかった人口群におけるパーキンソン病(PD)遺伝学研究の推進にコミットする参加者が集まりました。ここ数年のGP2の共同研究によって、アジア地域のPD遺伝学研究が進展してきました。研究者が地域の患者コホートを確立し、遺伝・臨床データの活用を拡大することを支援し、アジアの人口群におけるPD遺伝学の理解を深めています。
会合の最初の2日間は、今後3年間のGP2のミッションと戦略的方向性を進め、アジア人口群の遺伝・臨床データの収集を強化するために地域協力を強化することが話し合われました。基礎遺伝学、PDに関する進行中のGP2イニシアティブ、アジア各国の非定型パーキンソニア障害など、幅広いテーマでセッションが行われました。CHECK PDスクリーニングイニシアチブ、タイにおける前駆性PD集団と臨床顕在性PD集団両方における遺伝子コホートの確立などのプロジェクトが、注目を集めました。さらに、環境要因とPD遺伝学との相互作用、前駆性PDの遺伝学、PDにおける遺伝子所見の治療的意義、タイ国立PDスクリーニングコホートで実施された治療戦略としての生活習慣改善(EAT-MOVE-SLEEP)についても議論されました。この会合は、これまでGP2に関わったことのない東南アジア地域の研究者を参加させるプラットフォームとしての役割も果たしました。
タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ラオス、ミャンマー、マレーシアから合計80名が参加しました。集団特有の遺伝的変異によって決定される未来の精密医療のアプローチの可能性について、病気の初期段階から遺伝学の重要性が強調されました。GP2が支援するこの会合は、東南アジア全体の科学交流を促進する国際コンソーシアムの価値を体現しています。特に、大気汚染と遺伝的感受性の相互作用がPDリスクに与える影響を検討する研究プロジェクトの提案や、タイの都市部と農村の人口群間の比較分析を行う遺伝的コホートの確立のためのイニシアチブになる可能性があります。PDにおけるバイオマーカーコホートの発掘についても広く議論され、すでに確立されているグローバルなコホートとの連携に向けた積極的な計画が進行中です。
スキルと能力の構築
会合の最後の2日間は、バイオインフォマティクスのワークショップが行われ、参加者に実践的な技術力と、遺伝的発見の解釈と伝え方に関するスキルを身に付けてもらうことが目的でした。バイオインフォマティクスの能力は東南アジア地域ではまだ限定的で、PDに関心を持つ神経内科医の大半は、分野専門知識が十分ではありません。ワークショップにはタイ、インドネシア、マレーシア、パキスタンなど、東南アジアから20名の参加者が集まりました。神経内科医、運動障害専門家、研究者、データサイエンティスト、大学院の研修生など、さまざまな人たちが参加しました。多様な人口群のPDを理解するには、地域ごとの能力構築が不可欠です。これらのワークショップは、研究者が分析を主導し、自身のコホートから集めたデータを解釈して地域主導型の研究を推進するために必要なスキルを提供するきっかけとなります。今後のプロジェクトでは、PRKNなど単一遺伝子解析を中心に、遺伝子とデジタル表現型の相関関係の解析等も予定しています。
ワークショップでは、GP2が遺伝・臨床データを調べるために使用するプラットフォームVerily Workbenchの紹介など、実践的なトレーニングに焦点を当てました。続いてのセッションでは、GP2データリソース、臨床特徴解析、すでに確立されているPD遺伝子の変異を持つ人の同定、症例対照解析を用いたPDリスクの評価について取り上げました。これらの分析を地域のコホートに活用すると、アジアの人口群に特有と考えられる遺伝・臨床パターンを特定するのに役立つと同時に、PDのリスクと進行に関する知見をグローバルレベルでに得ることができます。翌日の焦点は、遺伝的所見の解釈でした。セッションでは、遺伝子研究のための文書の執筆、遺伝的結果の解釈の仕方、結果を患者に知らせる時や患者と話し合う際のベストプラクティスについて話し合いました。
このイベントは、GP2トレーニングとネットワーキンググループの支援を受けてアジアで開催されたバイオインフォマティクスのワークショップとしては、インドのコルカタ(2023年)、マレーシアのクアラルンプール(2024年)、キルギスのビシュケク(2024年、2025年)に続いて5回目となります。これまでのフィードバックや地域で大切なことに基づいて、このプログラムは、基礎バイオインフォマティクス、変異解釈、結果の返し方、科学論文の執筆等をカバーし、地域の研究者コミュニティのニーズに合わせて調整されました。この会合とワークショップは、新しいコラボレーションを促し、東南アジア全域での新しいPD遺伝学プロジェクトを進めました。セッション以外では、参加者同士でバンコク市内を探索したり、美味しい屋台料理を楽しむ機会もありました。特にもち米とマンゴーのデザートは皆に大人気でした!
主催者からの視点
私にとって初めての国際講演となったこの地域会合でのスピーカー、そしてワークショップのトレーナーとしての経験は、キャリアにおいて有意義なマイルストーンとなりました。3年前、私はトレーニング生としてインドのコルカタで開催された第1回GP2バイオインフォマティクスワークショップに参加しました。トレーニング生とトレーナーの両方を経験し、新しいスキルを学ぶ課題や楽しさをより深く理解することができました。また、経験を通して教え方も学んだので、初心者でもわかりやすいように概念を説明することを心がけています。私のこれまでの経験は、GP2トレーニングとネットワーキンググループの方たちを中心に、多くのメンターや同僚による指導、皆さんのやさしさやサポートのおかげでとても充実しています。学び、成長し、コミュニティに貢献する機会を提供してくださるGP2に感謝しています。
この会合とワークショップに参加できたことは、本当に素晴らしかったです。GP2での私の仕事は、世界の研究者が大規模な遺伝子データにアクセスしやすく、使いやすく、有意義なものにすることに重点を置いています。今回はその使命を反映していると思いました。さまざまな科学分野の背景を持つ参加者がGP2データに関わり、鋭い質問をし、分析を自分たちの研究コミュニティのニーズに結びつけているのを見て、刺激を受けました。この経験は、能力構築とは単にデータや分析を教えることではなく、研究者が地元で役に立つ質問をしたり、研究を主導する自信を持てるような、協力的なネットワークを作ることだと再認識しました。アジア地域におけるGP2コラボレーションの未来に感謝し、エネルギーとやる気を感じつつバンコクを後にしました。
第1回GP2パーキンソン病遺伝学学会を主催し、タイでワークショップに参加したことは、PD遺伝学の基礎的知識を強化し、神経科医の私のニーズを満たしてくれました。モチベーションも高まりました。実践的なワークショップは素晴らしく、バイオインフォマティクスのスキルを向上して遺伝子データ解析にどのように応用するかの実践的知識を得ることができました。地元の主催者として、世界中の調査員や研究者、特にタイや近隣の東南アジア諸国の研究者とつながる機会に恵まれたことに感謝しています。GP2トレーニングとネットワーキンググループの支援を受けている第一線の専門家と共に研究発表やアイデアの共有、コラボレーションを行うことができ、大変刺激になりました。このような経験は、現在の遺伝子プロジェクトを大きく前進させ、パーキンソン病および関連疾患に焦点を当てた新しい提案を促し、将来のコラボレーションのためのネットワークを強化することができると思います。
Pattamon Panyakaew博士もこの記事に寄稿しました。
