なぜ異なる人口集団で病気を研究するのですか?
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なぜ異なる人口集団で病気を研究するのですか?

By Ignacio Fernandez Mata | , |
Author(s)
  • Ignacio Mata

    Ignacio Fernandez Mata, PhD

    Cleveland Clinic | USA

    博士は現在、Cleveland Clinic FoundationのLerner Research Institute(LRI)の一部であるGenomic Medicine Institute(GMI)のアシスタントスタッフで、Case Western Reserve UniversityのCleveland Clinic Lerner College of Medicineの分子医学の助教授です。パーキンソン病(PD)遺伝学の分野で16年近く働いており、PD遺伝学に... Read More

スペインで育ち、科学者としてのキャリアを始めましたが、最初のヒトゲノムが配列決定される前に、研究が極端にヨーロッパ中心的である(ヨーロッパ系の人口集団のみに焦点を当てている)ことは全く考えていませんでした。ラテン系アメリカ人が大部分を占めるフロリダ州に2004年に引っ越し、主にヨーロッパ系の参加者からのサンプルのみを取り扱っていた時でも、その背後にある理由を考えませんでした。

しかし、2006年にラテンアメリカ運動障害協会が主催したペルーでの会議で講演をしたのですが、滞在中にこの分野におけるラテンアメリカ人研究対象の少なさに驚きました。ラテンアメリカのほぼすべての国の運動障害専門家が、パーキンソン病(PD)遺伝学に関する私の話を聞いてくれました。この新しい遺伝子はLRRK2と呼ばれ1〜2%の確率で患者にPDを引き起こすと思われていました。質疑応答中に多くの臨床医が、この遺伝子の突然変異がラテン系アメリカ人にどれほど頻繁であるか、そしてどのようにしてすべての患者を検査できるかを知っているかと私に尋ねました。彼ら全員の前で、私はそれについては知らないことを認めなければなりませんでした。すべての研究はヨーロッパ系祖先を持つ人を対象に行われていました。

ラテン系アメリカ人にはヨーロッパ系祖先を持つ人もいますが、同じ国内であっても、大きな個人差があります。数年後、同じ臨床医の患者で行われた研究では、LRRK2の突然変異の頻度が平均のヨーロッパ系祖先の割合に密接に関連していることがわかりました。ペルーのようにヨーロッパ系遺伝子が少ない場合、頻度も最少になります。

 

各国のLRRK2突然変異の頻度とヨーロッパ系祖先の割合の関係を示すグラフ(Zabetian et al. 2017より引用)

別のPD遺伝子、GBAの研究では、頻度だけでなく、ラテンアメリカ各国で見られる突然変異の種類も異なり、場合によっては人口集団固有であることが示されています 。

これらの調査結果はすべて、特定の母集団でテストする遺伝子を決定する場合や、各患者コホートで最も重要な治療標的を選択するときに大きな影響を及ぼします。PDにおける遺伝学の役割について知るうえで、この情報はこの(または他の)病気の発症リスク、遺伝によって影響を受ける可能性のある多様な結果を予測するために重要です。

ここではラテン系アメリカ人について話しましたが、アフリカ、インド、東南アジアなど、他のこれまで取り上げられてこなかった人口集団も該当します。これは、精密医療や個別化医療に向かうにあたり解決しなければならない大きな課題です。この知識の欠如は、既存の健康格差を拡大させるからです。

幸い、この課題についての認識は高まっており、状況を改善するための世界的な取り組みに拍車がかかっています。Aligning Science Across Parkinson’s(ASAP)のグローバルパーキンソン病遺伝学プログラム(GP2)は、世界中の研究者を集め、PDの遺伝的構造をさらに理解し、特にこれまで取り上げられてこなかった人口集団に焦点を当てています。目標は、ラテンアメリカ、カリブ海、アフリカ、インド、東南アジア、中国、および米国の少数民族から5万人の非ヨーロッパ人種を含む、少なくとも15万人の新しいボランティアを対象に研究することです。

グローバルなコラボレーションを通じて、遺伝子研究の多様性を高め、これまで取り上げられてこなかった人口集団の健康格差を最小限に抑えるために、大きな前進を遂げることを期待しています。この取り組みにぜひ参加してください。

このブログ投稿をサポートしてくれたメタラボの新メンバーEmily Mason氏に感謝します。